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竹中平蔵、中国で日本経済を語る [BOOK]

大和書房、2008年5月発売。

竹中平蔵元総務大臣。
数年前まではずっと時の人だった。

竹中さんが中国の北京大学で特別講義をまとめたのが本書。
日本経済発展のメカニズム、バブル崩壊、郵政民営化、官僚、中国は日本の脅威かなどをきわめて明快にわかりやすくまとめている。
竹中さんは、サミュエル・スマイルズの自助論を地で行く経済学者であり、だからこそ、アメリカ・グローバル資本主義の手先だと批判も浴びてきた。
頑なに自分の理論を貫く学者魂を感じる。

経済学をきちんと学んだことがないため、基本的な解説が特に勉強になった。

①資本の生産性について
高度成長期の日本は、資本の生産性が高かった。100万円設備投資で、100万円の生産を生み出していた。GDP比で10%を設備投資が占めていたとして、成長率で10%近い寄与があった。
今の日本は、労働力と機械といった、生産に直結する直接的な設備投資ばかりだった時代と異なり、安全性、環境や福利厚生といった間接的な設備投資が大半を占めていて、資本の生産性が低い。GDP比で5%を純粋部分の設備投資があったとして、成長率で2%くらいの寄与しかなくなっている。(P.39~40)
先進国になるということは、非効率的な部分(価値観的には重要だが)に投資をしていくということであり、それが経済成長を鈍化させているんだな。

②ナイトの不確実性(p.58)
「これから先どうなるかわからないという不安があると、人は最悪のケースを想定して行動する。」
企業間取引における信用崩壊(ディスオーガニゼーション)で産業組織が崩壊するのとならんで、バブル崩壊後に日本で大きくはびこっていた。
不景気はいろいろなものを壊していく。

③銀行はなぜ「特別」か(p.75)
「銀行は『預金』という決済インフラを持つという意味で、特別な機関」
すなわち、給料、公共料金、クレジットカードの買い物料金の引き落としをするインフラが崩壊することは国民生活に直結するため、是が非でも守らなければならないということ。

④戦略的アジェンダ(p.137)
ボーリングのセンターピン。
ここに当てられるかどうかが政策が成功する鍵。
誰もが理解できて目に見える政策であり、かつ波及効果が期待されるもの。
レバレッジポイントとかなり近い考え方だと思う。
まず見つけられるかどうかが成功の分かれ道。
これは、マッキンゼーの成長戦略で触れた成長機会の把握がうまくいくかどうかが成功の最大の分かれ道というのとも同じ。

⑤日銀のマネーサプライ(p.186)
日本銀行のマネーサプライの伸び率は他国と比べて低く、それがデフレを引き起こしており、日銀はどんどん国債を購入してマネーサプライを増やすべきと主張している。
つい先日デフレ対策としてマネーサプライを伸ばしましたね。
竹中さんの言う通りということなのでしょうか。

⑥年金は実は保険(p.193)
「『歳をとったら自動的に生活費をもらう権利が生じる』といのは、日本人の多くが抱いている幻想」、人生設計は自助自立して立て、年金はあくまでリスクをカバーするものと断言。
一方で、すでに当てにしている人たちが多くいるので白地のキャンパスというわけにはいかない政治問題とも指摘。

竹中さんの理屈は非常に筋が通っていて分かりやすい。
自助自立は第一原則だし、とても重要だと思う一方で、それを認めることが格差拡大につながっている面は否定できず、その辺が自分の中で受け入れきれないところ。
自助→共助→公助は間違いないけれどもそれをどのタイミングでどの程度出してくるのが一番良いのかということで意見は分かれる。


竹中平蔵、中国で日本経済を語る

竹中平蔵、中国で日本経済を語る

  • 作者: 竹中 平蔵
  • 出版社/メーカー: 大和書房
  • 発売日: 2008/05/23
  • メディア: ハードカバー



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