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ワークライフシナジー 大沢真知子著 [BOOK]

岩波書店、2008年3月発売。

基本的なワークライフバランスの考え方や実際に取り組んでいる企業の事例を紹介している本です。
大沢さんの日本人口学会(2008年6月)における講演を聞いたこともあり、図書館で目についたので、読んでみた。

ワークライフバランスの重要性を力説するも、いろいろなところで、経営者等からワークライフバランスの実現の困難さを聞かれるようで、よく聞かれるということ事実自体について、少々悩んでいらっしゃるような印象を受けた。
一番のボトルネックは、特に経営者の発想の転換の問題だと改めて思った。
経営者が発想を転換できないということは、社会がそこまで成熟していないということだと思う。

地方は一般的に特殊合計出生率が都市に比べて高い。
その理由は、中小企業、自営業、農林水産業で働いている女性の割合が高いことも要因の一つだと考えている。

大沢さんも、本の中で触れているが、自営業で働いている女性の方が、希望する子ども数と実際に生んだ子ども数の差が少ない。
「子供のそばにいながら働ける働き方を生み出す必要があるのではないかとおもっていた。・・・子供が母親を必要とする一時期に、子供の近くにいられる働き方が提供されれば、女性の職場への定着は高まるのではないかと考えている。」(p.127)

実は、中小企業は、職住が接近している、すなわち、通勤時間が短かかったり、職場に子どもを連れてきて、ちょっとだけ見てもらったりできたりすることが多い。
もちろん、通勤時間も含めた勤務時間や子育て環境というのは、給料や仕事のやりがいと並んで、仕事の善し悪しを決める非常に重要な要素だと思う。

大沢さんがが本の中で言っていることも、ほとんど全く自分と同じ考え方で、逆に新鮮さはあまりなかったのが、ちょっと残念。
外国人の旦那さまとの結婚生活については、面白いエピソードがいくつも紹介されていて、その部分は、新鮮。
あと、今の女性が望む結婚相手の条件は、「三高」ではなく、2、3年前は、「三低(低姿勢<レディファースト>、低リスク<安定した職業>、低依存<束縛しない>)」で、今は「三手(手伝う、手を取り合う<協力と理解>、手をつなぐ<愛情>)」だそう。へええぇ。

ワークライフバランスは、去年の春くらいから自分の中で非常に優先順位が高い課題。
おそらく、この方向性は、少なくとも大枠としては正しいはず。
継続して研究・勉強していきたい。
果たしてパラダイムは変わるのか。


ワークライフシナジー―生活と仕事の“相互作用”が変える企業社会

ワークライフシナジー―生活と仕事の“相互作用”が変える企業社会

  • 作者: 大沢 真知子
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2008/03
  • メディア: 単行本



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世界認識のための情報術 佐藤優著 [BOOK]

金曜日、2008年7月発売。

佐藤優さんの本を初めて読んだ。
週刊誌等の投稿記事から、佐藤さんの文章から、骨太な印象を持っていた。

普段全く読んでいないジャンル。
とはいえ、佐藤さんの文章は、非常に理知的かつわかりやすい。
佐藤さんの中で、完全に考え方が整理・分析されているため、思想や信条が違う人にも、立場の違いがあったとしても、わかりやすく伝わるのだろう。
あまり意識的に考えることの少ないジャンルだが、潜在的に考えていることが自分の中で言語化されていく感じで、読んでいて新鮮だった。

これからも、たまにこの手の本を読むように心がけて、視野を広げ、自分の考え方を整理していかなくては。


世界認識のための情報術

世界認識のための情報術

  • 作者: 佐藤 優
  • 出版社/メーカー: 金曜日
  • 発売日: 2008/07
  • メディア: 単行本



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そうか、もう君はいないのか 城山三郎著 [BOOK]

新潮社、2008年1月。

経済小説で著名な故・城山三郎氏の本。
今まで、「官僚たちの夏」、「毎日が日曜日」、「勇者は語らず」などを読んだが、この作品は全く異なる。
先立たれた奥様との思い出を、非常に素直な表現で、柔らかい文体で書かれている。

「『おい』と声をかけようとして やめる
 五十億の中で ただ一人『おい』と呼べるおまえ
 律儀に寝息をつづけてくれなくては困る」

二人の出会い、一緒に過ごし積み重ねた夫婦生活、先立たれた喪失感が、心にしみる。


そうか、もう君はいないのか

そうか、もう君はいないのか

  • 作者: 城山三郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2008/01/24
  • メディア: ハードカバー



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島根県立美術館の橋本関雪展に行ってみた。 [ART]

ローカルな話で失礼。

松江市宍道湖のほとりにある島根県立美術館。
http://www1.pref.shimane.lg.jp/contents/sam/
年間パスポートを持っていることもあり、時間があればふらふらと寄っている。
石橋和訓 の《美人読詩》が特に好き。

橋本関雪展を今開催中。(9月14日まで)
無学なせいで、全く知らない画家だった。
犬の絵(「唐犬図」)で宣伝していることもあり、正直あんまりどうかなと思っていたが、気が向いたので行ってみた。

良かった。

橋本関雪が13歳のときに書いた絵「静御前」が一番最初に飾っている。
上手すぎる。既にプロ顔負けである。
こういうのを早熟の天才と言うのだろう。

その天才が早くから日本画壇で評価され、連続して入選する。
その過程で、日本画だけでなく、西洋画や中国画の手法を大胆に取り入れ、常に学び続けているのがよくわかる。

李亀年と杜甫が再会を果たしながらの浮かばれぬ表情を絶妙に描いた出世作の「失意」に始まり、立身の望み破れて故郷に帰る様子を描いた「陶淵明」、そして妻に先立たれて7年経った関雪自身を投影したとも言われる「霜猿」。
老成して行く中で、ますます絵に深みが増していく様子が、絵についてド素人の自分にも伝わり、心が揺すぶられた。

9月17日〜は京都大丸でも開催されるらしいので、少しでも興味のある方は是非とも。

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断る力 勝間和代著 [BOOK]

文春新書、2009年2月発売。
勝間和代さん本の感想第5弾。

勝間さん節、「大爆発」の本。
「日本版『鉄の女』」、勝間和代。

全編、「そこまで言いますか?」というほどのインパクト。
一種の「実験的な本」とも言える。

インパクトがあった、主な部分は以下のとおり。

①表紙の手を挙げて断っている勝間さんの姿のインパクト大。この表紙自体、賛否両論あるでしょう。
②「また、勝間の自慢話が始まった、と呆れてしまう人たちがたくさんいることも重々承知の上で、書いています。」(p.21)
③「『断る力』がないと『2ちゃんねる』で不満をぶつけてしまう」(p.32)・・・例によって、具体的な人の例を挙げて書いています。この人も本で取り上げられたことを知ったら、立ち直れないダメージを受けるでしょう。勝間さんは、おそらくこの人を敵にまわしてもかまわないという確固たる自信があるのだ。
④「相手の肩書きをみて、少しでも自分より上だと考えてしまうと、とたんに媚びへつらうのです。私はそういう人たちを、『ランク主義者』と呼んでいます。」(p.136)

僕のまじめな感想は以下のとおり。

断らず同調する人に対して否定的な見解をぎっしり並べて、誰でも代わりがいる「コモディティ(汎用的な人材)」になるのか、代わりがいない「スペシャリティ(市場価値の高い人材)」になるのかを迫力ある文体で、読者に問いかける点は非常に秀逸。

実際には、世の中には、圧倒的に同調性があり、誰からも好かれ、同調することにストレスを全く感じない人もいる。
(そういう才能はある意味「スペシャリティ」と言えるかもしれない。)
そういう才能を持った人が日本の社会では中心的な役割を担っていると思うし、それはそれで良いと思う。
それに、勝間さんがこの本を通して、お薦めする生き方、すなわち、リスクをミニマイズすることに注力するのはなく、リターンをマキシマイズすることに注力する人が増えた場合、正直、本当に社会が良くなるのかもわかりません。
リターンをマキシマイズすることは、自分の利得だけを考えることにつながりかねず、他人のことを思いやる気持ちが忘れ去れるかもしれないから。
勝間さんが「利他」を大事にしていることもわかっているけれども、リターンをマキシマイズする生き方は、目先の「利己」の方だけにもつながりやすい考え方でもあります。

しかし、そこを強調しすぎると、結局、何にも改善しない。
「空気を読むこと」が過度に大事にされる社会は、閉塞感で覆われて、息苦しい。
もっと社会には出る杭がいっぱいあって良いと思う。
そういう意味で、あえて勝間さんは、「スペシャリティ」や「断る力」を単純化して記述したと理解しました。

そのバランスをどのように考え、これから生きていくかとを改めて考えさせてくれた。
そして、「自分の感性を大事にして、できる範囲でやっていこう」という「割り切り」もね。
良い本です。


断る力 (文春新書)

断る力 (文春新書)

  • 作者: 勝間 和代
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2009/02/19
  • メディア: 新書



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