「ニート」って言うな! 本田由紀・内藤朝雄・後藤和智著 [BOOK]
光文社新書、2006年1月発売。
ニート("Not in Education, Employment or Training")=働かず、就学もせず、求職行動もとっていない若者
本書は、著者の一人である本田さんのblogのコメント欄で盛り上がって、それまで一度も会ったことのなかった三人が集まって一冊の書くことになったとのこと。
若者雇用問題や少子化問題等の現代社会の抱える課題を若者とその家族に負わせ、若者を変えることに力点を置いている政府や世論に対する反発は三人の共通するところである。
システム思考的発想でいえば、ツボじゃないところをいくら押したって、間違った方向にしか作用しないということなのだろう。
まず、本田さん。
政府や世論は、そのニートが増えているというが、就業構造基本調査結果から、統計的に「働きたくないニート((注)ラクだによる言葉)」は増えていない。
あくまで増加しているのは、「働きたいニート((注)ラクだによる言葉)」であり、またそれを含めた若年失業者であり、フリーターであるとしている。
そういう状況なのに、「働きたい」という意識の植え付けをすでに「働きたい」と思っている若者に強要するのは筋違いであり、さらに、「働きたいニート」に対しても「ひきこもり」「犯罪親和層」とするのは、言語道断と主張している。
「働きたくないニート」対策としては、できるだけ早い段階から予防と巻き込まれてしまった場合の支援の二つが大事としている。
圧倒的な多数を占める「働きたいニート」を含めた若年失業者対策にとしては、学校経由の就職が量的に飛躍できない以上、新採以外の無業者やフリーターも含めた若年労働市場の道筋として確立させ、そのためには、正社員の処遇を一定程度引き下げる必要があるとしている。
また、専門高校の量を現在よりも大きく拡大する必要があるとしている。
次に、内藤さん。
警察庁の統計を示して、現在の青少年犯罪で殺人や強姦といった凶悪犯罪が減少傾向にあり、「草食動物化」していることを強調している。
そのうえで、「ニート」をめぐる状況は一種の「祭り」であり、「パラサイト」「ひきこもり」という先行ヒット商品を経て、生まれたと分析。
若年者を悪者にするメカニズムについて、「マス・メディアの悪辣な扇動と、大衆の歪んだ憎悪と不安と被害感が相互に誘導しあうダイナミズムが問題です。このダイナミズムから生まれた世論を政治が利用します。」(p.168)
最後に、後藤さん。
マスコミ等でどのように「ニート」という言葉が使われているかを丁寧に分析している。
「ニート」という言葉の定義もバラバラであり、現在の若者全体を表すかのような誤用・乱用がみられるとしている。
「我が国において『ニート』論が社会構造の問題よりも青少年の内面の問題として問題化されることが多かったことから生まれているといえる。」(p.296)
内藤さんと後藤さんは、「教育」(本田さんも含めそれぞれ定義が違うようだが)に対して懐疑的・否定的だ。
悪いことについて自分じゃない何かに原因を求めたがるのは、人類共通じゃないかと思ったりする。
「○○が悪い」と言って、それが大きなうねりとなってしまう。
悲しいことだ。
そういうことを前提として、どうやってうまいこと解決に向けて動かすような波を作っていくか。
道は険しい。
ニート("Not in Education, Employment or Training")=働かず、就学もせず、求職行動もとっていない若者
本書は、著者の一人である本田さんのblogのコメント欄で盛り上がって、それまで一度も会ったことのなかった三人が集まって一冊の書くことになったとのこと。
若者雇用問題や少子化問題等の現代社会の抱える課題を若者とその家族に負わせ、若者を変えることに力点を置いている政府や世論に対する反発は三人の共通するところである。
システム思考的発想でいえば、ツボじゃないところをいくら押したって、間違った方向にしか作用しないということなのだろう。
まず、本田さん。
政府や世論は、そのニートが増えているというが、就業構造基本調査結果から、統計的に「働きたくないニート((注)ラクだによる言葉)」は増えていない。
あくまで増加しているのは、「働きたいニート((注)ラクだによる言葉)」であり、またそれを含めた若年失業者であり、フリーターであるとしている。
そういう状況なのに、「働きたい」という意識の植え付けをすでに「働きたい」と思っている若者に強要するのは筋違いであり、さらに、「働きたいニート」に対しても「ひきこもり」「犯罪親和層」とするのは、言語道断と主張している。
「働きたくないニート」対策としては、できるだけ早い段階から予防と巻き込まれてしまった場合の支援の二つが大事としている。
圧倒的な多数を占める「働きたいニート」を含めた若年失業者対策にとしては、学校経由の就職が量的に飛躍できない以上、新採以外の無業者やフリーターも含めた若年労働市場の道筋として確立させ、そのためには、正社員の処遇を一定程度引き下げる必要があるとしている。
また、専門高校の量を現在よりも大きく拡大する必要があるとしている。
次に、内藤さん。
警察庁の統計を示して、現在の青少年犯罪で殺人や強姦といった凶悪犯罪が減少傾向にあり、「草食動物化」していることを強調している。
そのうえで、「ニート」をめぐる状況は一種の「祭り」であり、「パラサイト」「ひきこもり」という先行ヒット商品を経て、生まれたと分析。
若年者を悪者にするメカニズムについて、「マス・メディアの悪辣な扇動と、大衆の歪んだ憎悪と不安と被害感が相互に誘導しあうダイナミズムが問題です。このダイナミズムから生まれた世論を政治が利用します。」(p.168)
最後に、後藤さん。
マスコミ等でどのように「ニート」という言葉が使われているかを丁寧に分析している。
「ニート」という言葉の定義もバラバラであり、現在の若者全体を表すかのような誤用・乱用がみられるとしている。
「我が国において『ニート』論が社会構造の問題よりも青少年の内面の問題として問題化されることが多かったことから生まれているといえる。」(p.296)
内藤さんと後藤さんは、「教育」(本田さんも含めそれぞれ定義が違うようだが)に対して懐疑的・否定的だ。
悪いことについて自分じゃない何かに原因を求めたがるのは、人類共通じゃないかと思ったりする。
「○○が悪い」と言って、それが大きなうねりとなってしまう。
悲しいことだ。
そういうことを前提として、どうやってうまいこと解決に向けて動かすような波を作っていくか。
道は険しい。
2009-11-14 22:58
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