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犯人目線に立て! 危険予測のノウハウ 小宮信夫著 [BOOK]

PHP、2007年11月発売。

小宮信夫氏は、近年、イギリス、アメリカで犯罪抑止の効果が出ているとされる犯罪機会論を主張している。
これまでの犯罪対策の主流は、犯罪者が犯行に及んだ原因を究明し、それを除去することによって犯罪を防止しようとする犯罪原因論によっていた。
それに対して、パラダイム・シフトといっていいほどの流れの変化を起こした。
「それは、犯罪の機会を与えないことによって、犯罪を未然に防止しようとする考え方である。
言い換えれば、“犯罪機会論”は被害者の視点から、すきを見せなければ犯罪者は犯行を思いとどまると考える立場である。
この立場では、犯罪者と非犯罪者との差異はほとんどなく、犯罪性が低い者でも犯罪機会があれば犯罪を実行し、犯罪性が高い者でも犯罪機会がなければ犯罪を実行しないと考えられている。この考え方に基づいて、欧米諸国の犯罪対策は、物的環境の設計や人的環境の改善を通して、犯行に都合の悪い状況を作り出すことが主流になった。(小宮信夫氏/犯罪社会学者2005年7月11日 SAFETYJAPAN2005)」

本書でも、犯罪原因論は、罪を犯した者に専門家がケアをする際に最も効果的であり、予防という観点ではあまり意味がないことを指摘している。
犯罪原因論と親和性の高い「不審者」という言葉の使い方についても注意喚起している。
見た目が怪しげな人で使われる場合も、ほとんど犯罪者と同義で使う場合もある言葉であり、下手をすれば人権侵害につながりかねないと鋭く指摘している。
「不審者」に注意しましょうというやり方は、確かに、子どもが大人に対して「不審者」かもしれないと思って離れていきかねないし、人に対するレッテル張りのような副作用が出やすい。
レッテル張りは、もともとなんら問題の無い人が信用されていないことに絶望し、かえって悪循環を起こしかねない。
「不審者」に注目するやり方は賢いやり方ではなさそうだ。

また、「入りやすく」「見えにくい」ところで、犯罪は起こりやすいとしているのは、非常に簡潔でわかりやすい。
逆に、「入りにくくする」「見えやすくする」ことで、犯罪は起こりにくいとすんなり入っていける。
犯罪機会論だけで、犯罪が予防できるわけではないと思うが、アプローチの仕方としては共感できる。

この犯罪機会論の教育等の環境整備等の他の分野への転用を、4年以上前から思っている。
うまくできれば、子どもが健やかに成長する環境とは何か、勉強に一生懸命取り組める環境は何か、そういった感じで建設的な議論につながりやすそうだ。
学習意欲につながる環境の研究、心や体を鍛える環境の整備につなげることも可能かも。
青少年健全育成のための有害図書の排除、たむろ場の排除といった手法の妥当性も冷静な議論がしやすくなるだろう。
良い成果の出ている地域や学校等の取組もそういう意味から捉え直せば、新しい発見があるのではないか。
やれ学力低下の犯人は誰か、いじめが多発したのは誰のせいかといった、責任のなすりつけあいや後ろ向きになりがちな議論に拘泥しなくなるのではないか。

また、人ではなく場所に着目した方が副作用が出にくく「レバレッジ・ポイント」の発見にもつながらないか。
うさんくさく思われるおそれはあるが、「子供が頭がよくなるマンション」みたいなもの(http://www.itochu-sumai.com/media/fig04.html)も、発想の着眼点として、意外とありだと思う。
他人からよく見えるところでは、悪いことはできないし、むしろ良いところ見せようと思うのが、人間の心理ではないだろうか。
自分の中でよく反芻してみたいと思う。


犯人目線に立て! ―危険予測のノウハウ

犯人目線に立て! ―危険予測のノウハウ

  • 作者: 小宮 信夫
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2007/11/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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